HDDに10話までしか録画できていなかった『琴浦さん』を観た。11話、12話はdアニメで。
CMカットして残しておいたんだけど、編集してる時にうっかり例の血まみれシーンを観てしまい、日常系からサスペンスホラーに唐突に切り替わるアニメだと勝手に勘違いしていた。なので登場人物の誰かが殺されるものとずっと思っていて、それでちょっと手が出なかったんだけど、dアニメにあることを知りHDDの容量確保も兼ねて一気観した。
ストーリー
翠ヶ丘高校に転校してきた琴浦春香は、一見、普通の女子高生だが、実は人の心を読めてしまう能力の持ち主。
その能力のため幼い頃から辛い経験を繰り返し、心を閉ざして周囲から距離を置いていたが、クラスで隣の席になった真鍋義久との出会いがきっかけとなり、彼のエッチな妄想に振り回されながらも徐々に心を開いていく。
やがて、その力に目をつけた御舟百合子によってなりゆきから彼女が部長を務めるESP研究会に入部することになるのだが…
人の心が読める少女と彼女に惹かれる少年が織り成す学園ファンタジーラブコメ
琴浦さんはサトリ(覚)です。
人の心を読むことができる妖怪の一種、「サトリ(覚)」の民話は、日本人なら誰もが知っている有名なお話なので説明は不要だろう。
その「覚」を基として作られた、世にも奇妙な物語の「常識酒場」「トラブル・カフェ」に端を発した『NIGHT HEAD』という作品に、『琴浦さん』は大きく影響を受けていると思われる。それは、超能力を持つことは日本社会においてはマイナスでしかない、という『NIGHT HEAD』の基本設定が『琴浦さん』でもそのまま使われていることからも推察できる。
『NIGHT HEAD』のWikiから引用
それまでの超能力ものは、超能力を持つことが本人にとって益となるような肯定的な描かれ方をしたものが多かったが、本作は(当初は)超能力を持つことで人が苦しみ、悲しみ、不幸になるような、否定的な描かれ方をしたところが斬新であり、その逆説的なリアリティが過去作と一線を画したといわれる。
また、ESP研究会部長の御舟百合子の御舟が御船千鶴子から取られていること、百合子の母が自殺した顛末は「千里眼事件」ほぼそのままであることなどから、オカルト作品の系譜が流れている作品と言って良いだろう。
しかしながら、基本的には「学園ファンタジーラブコメ」なので、オカルトはあくまでもキャラクターや世界観に深みを持たすための設定として使われている要素でしかなく、オカルト苦手、という人にも、最初の数話を乗り切ればたいそう幸せな気分になれる作品としてオススメしたい。
※ただし、第1話の途中まではほんとシリアス鬱展開なので覚悟してみるべし。
全話インプレ
原作の魅力を一定方向へ突き詰めた良いアニメ化の代表例です。トラウマ級の第一話から、その後幾多の試練はあれど、基本的には琴浦さんが笑顔と他人への信頼を取り戻していくシリーズ構成になっており、最後はすべて丸く収まる大団円になっています。これはもう太田(雅彦)組による、演出・シリーズ構成・脚本の一体感によって生まれた名作と言って良いでしょう。
もはや十何年も前のドラマを焼き直しするしかできない月9より、『琴浦さん』の方がよっぽどまともな王道のラブストーリーを描いているので、恋愛ドラマファンにもオススメできます。
オススメ度:10点★★★★★★★★★★
各話140文字感想はこちら(未完成:時間と余裕があれば1話ずつ)
- #1「琴浦さんと真鍋くん」
- #2「初めての……」
- #3「嬉しくて、楽しくて」
- #4「変わる世界」
- #5「学園天国?」
- #6「夏休み!」
- #7「この世界に私は」
- #8「デートじゃないもん」
- #9「まわりにはみんなが」
- #10「だけどあなたはいない」
- #11「スタンド・バイ・ミー」
- #12「伝えたい言葉ココロ」
#1「琴浦さんと真鍋くん」
他人の、口から出る建前と心で思っている本音の間で苦しめられる琴浦さんの幼女時代を第一話のアヴァンで完璧に描ききっています。だんだん絶望しか見えなくなってくる演出が素晴らしく、その後に訪れる眞鍋くんとのファーストコンタクトへの導線の引き方は圧巻でした。それまで支配していた暗い画面がガラスのように割れ、一転明るくなって、からのオープニングという演出、すごく好きです。
#2「初めての……」
#3「嬉しくて、楽しくて」
#4「変わる世界」
#5「学園天国?」
#6「夏休み!」
#7「この世界に私は」
#8「デートじゃないもん」
#9「まわりにはみんなが」
#10「だけどあなたはいない」
#11「スタンド・バイ・ミー」
#12「伝えたい言葉ココロ」